映画ハリー・ポッターで、引き抜くと「アアアアア!」と恐ろしい叫び声を上げる不気味な植物として知られるマンドラゴラ(マンドレイク)。
物語の中だけに登場する架空の植物だと思われがちですが、実はマンドラゴラは実在の植物です。
しかも、その奇妙な姿や性質をめぐって、古代から中世、そして近世にいたるまで、さまざまな伝説が生まれてきました。
以前、ハーブや植物の歴史を調べる中でこの存在を知り、「本当にそんな恐ろしい伝説を持つものが実在するの?」と気になって、植物図鑑や歴史資料を紐解いてみました。
するとそこには、映画のような叫び声だけではなく、植物の姿から生まれた想像や、長い年月をかけて形を変えていった伝承が残されていたのです。
引き抜くと叫ぶ?「マンドラゴラ」の奇妙な伝説
なぜ「叫び声を聞くと死ぬ」と言われたのか?中世に広がった恐ろしい伝承
マンドラゴラには、地面から引き抜くと恐ろしい声を上げ、その声を聞いた人間は命を落とすという伝説があります。
そして、その危険を避けるために、お腹を空かせた犬をマンドラゴラにつなぎ、遠くからエサで誘導して根を引き抜かせるという奇妙な方法まで語られてきました。
研究では、「犬を使って引き抜く」という伝承は古くから存在し、「引き抜くと叫ぶ」という要素は12世紀ごろからヨーロッパで広く語られるようになったと考えられています。
もともと「犬を使って引き抜く」という伝承が存在していたところへ、後の時代になって「恐ろしい叫び声」という物語が重なり、より劇的で神秘的な植物として語られるようになったのでしょう。
中世の人々が抱いた恐れと想像力が、こうした伝承を豊かに育てていったのだと思うと、とても興味深いですよね。
根っこが人間の形にそっくり!伝説を生んだ植物の姿
マンドラゴラの伝説を語るうえで欠かせないのが、その根の形です。
太い根が途中で枝分かれするため、ものによっては人間の胴体や手足を思わせるような形になります。
この特徴は昔から人々の想像力を刺激してきました。
中世の写本や植物書では、マンドラゴラの根を人間の姿そのもののように描いたものも残されています。
実際の植物を見れば、どうして昔の人々が「不気味」と感じたのも納得です。
恐怖の裏に隠されたマンドラゴラの歴史
実は古くから知られていた植物
叫び声の伝説だけを見ると、マンドラゴラは単なる迷信の植物のように思えてしまいます。
しかし、マンドラゴラそのものは古くから知られていた植物で、古代ギリシャの医師・薬理学者ディオスコリデスの著作『薬物誌』をはじめとする古典的な文献にも登場します。
中世以降も薬草書などに描かれ、植物としての姿だけでなく、さまざまな伝承や物語と結びつきながら知られていきました。
マンドラゴラの伝説は、最初から現在のような形だったわけではありません。
人間の姿を思わせる根の形や、古くから伝わった採取方法などを背景に、長い年月をかけてさまざまな物語が重なっていったと考えられています。
現代に生きるマンドラゴラの姿
ナス科の植物としての正体
伝説だらけのマンドラゴラですが、植物学的にはきちんとした植物です。
紫色を帯びた花を咲かせ、丸い実をつけます。
観賞用として育てられることもあり、植物好きの間では知られた存在です。
中世ヨーロッパでは薬用植物として扱われていましたが、現代では、その成分に注意が必要な植物として知られています。
料理やアロマに使う一般的なハーブとは別の植物です。
おわりに
ファンタジーの中のモンスターだと思っていたマンドラゴラが、実は中世の歴史の中でさまざまな伝承と結びつき、人々の想像力によって物語が育っていったという背景を知り、歴史の奥深さに感動しました。
特に印象的なのは、昔の植物書に描かれた、人間の姿をしたマンドラゴラです。
映画『ハリー・ポッター』で聞いたあの「叫び声」も、突然生まれた空想ではありません。
長い年月をかけて受け継がれてきた、植物と人間の不思議な物語の一部だったのです。
身近な植物にも、調べてみなければ知らない歴史が隠れているかもしれません。
そんな小さな物語を探してみると、いつもの植物が少し違って見えてきそうです。
- ※ この記事は、マンドラゴラにまつわる歴史や伝承、植物学的な特徴を紹介するものです。観賞・取り扱いにあたっては適切な知識のもとで行ってください。


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